領域代表からの挨拶      2011年8月


    高橋淑子  
    京都大学大学院理学研究科 生物科学専攻 動物学教室

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 血管−神経融合研究は、とても大きなテーマです。血管と神経のそれぞれにまつわる問題だけでも大きな研究分野なのに、本領域ではこれらを融合させようというのですから、かなりの挑戦を覚悟する必要があります。目指す目標には大きく2つのポイントがあります。1つ目は、次ページで述べる、血管−神経ワイヤリングの成立機構の理解です。2つ目は、本領域研究が、我が国におけるさまざまな融合研究推進の起爆剤となることです(と期待)。融合研究というと、つい、バイオ-数理とか、バイオ-物理など、「字面上」の融合に傾くのが日本の悪い癖ですが、実質が伴わない研究が多いのも事実です。
 血管−神経を融合させるアイデアは、世界ではすでにいくつか提唱されており、実際さまざまな研究が進んでいます。数年前、この融合アイデアを日本の研究者に打診したときのことです。「血管と神経の融合だってぇ!これまで考えたことなかったなぁ、うん、そりゃおもしろい」という激励をゲット。でも正直言うと、多くの方は「俺は神経の‘専門家’だから、血管のことなど知らん!(あるいはその逆もあり)」と冷めてました。バイオ-バイオの融合ですら、これが現状なのです。
 血管−神経の融合研究には、基礎研究者としての幅広い視野と強烈な好奇心が求められます。ともすれば、「宇宙語」としか思えないような専門用語と、(入眠剤用の)細かいデータの乱立に終始しがちな昨今のバイオ研究と発表スタイルですが、この領域班では、これらの悪癖をぶっ壊して、是非とも新しい空気を作りたいものです。その新鮮な空気をたっぷり吸うことにより、研究者の心も体も(神経も血管も)蘇れば最高です。

蛇足ですが、最近某財団ニュースレター用に書いた原稿からの抜粋です。
 “「頭では解るが、心では解らない」ということがある。心でわかる(理解する)とは、気持ちがビリビリと震える実感をともなう。それは、興奮、熱い情熱、夢想など、いろいろだ。(中略)「熱き心」をどのように育成するのか?基礎研究の核心は、オモロイことの追求である。ところが、昨今どの学会にいっても、聴衆がおもしろがっているのかそうでないのか、わからないからつまらない。もっと悪いことに、発表者ですら、自分の研究をおもしろいと思っているのか不明なことが多い。オモロイことに触れて心が震えたら、次は近くの人に伝えてみよう。科学コミュニティに勢いがつく。若き研究者の眼差しの輝きが失われたら、シニア研究者もおもろしくない。国策のように進む○○研究とか△△プロジェクトに対して、勇気を出して「オモロナイな〜」と言えるようにならなければ、我が国の生命科学に将来はない。”

 

血管−神経領域班第一回ニュースレターより

 

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