Euroglia 2011

森田光洋(神戸大学理学系大学院)   

 



glia
 血管−神経ネットワークのサポートを頂き、2011年9月にプラハで行われたEurogliaに参加してきました。ヨーロッパではニューロンの学会(Federation of Eruopean Neusoscience; FENS)とグリアの学会(European Meeting on Glial Cells in Health and Disease; Euroglia)が1年おきに行われ、脳科学者に違った切り口で情報交換をする機会を提供しています。ここでは、血管と神経という視点から、興味深かった話を3つ紹介いたします。

.グリコーゲンと乳酸Symposium 5. Glycogen in physiology and pathology脳血流によるエネルギー供給はfMRIによる脳機能測定や脳梗塞の病態を理解するうえで重要な課題です。近年、この分野で大きな議論となっているのは「アストロサイトに蓄えられているグリコーゲンは何に使われるか?」「脳の活動に伴ってアストロサイトが放出する乳酸は神経細胞の主要なエネルギー供給源か?Lactate shuttling」という2点です。P. Magistretti(元FENS代表)やB. Ransom(GLIAのチーフエディター)といった大物が、「アストロサイトはグリコーゲンを分解して乳酸を放出することにより、シナプス可塑性や脳梗塞時の神経保護に必要なエネルギーが供給する」といった報告をしました。その一方で、G. Dienelなど、精密な脳の代謝測定している人たちは、「グリコーゲンの分解を阻害しても、神経細胞のエネルギー代謝に影響は出ない」、「アストロサイト由来の乳酸は神経細胞で利用されず、速やかに脳から排出されるなど、真っ向から対立した報告をしました。

2.脳血流関門の3次元培養Symposium 19. 3D neuronal cell cultureアストロサイト、血管内皮細胞、ペリサイトを三次元条件下で共培養することにより、脳血流関門をin vitroで再構築することができるという報告がありました(O. Ogunshola)。

3.脳血流調節の新展開 Symposium3. Glial control of brain vasculature in health and disease, Symposium24. Neuro-glial-vascular signaling pathways in the brainアストロサイトが神経活動に伴って血管を拡張させるメカニズムは、アラキドン酸代謝(B. MacVicar)、細胞外カリウム(M. Nelson)、さらにAdenosineや乳酸といったものが複雑に絡み合っており、これが微調整を実現していることが議論されました。実験系として用いられる脳の部位によって、血管調節のメカニズムが違うのかもしれません。また、「血管→アストロサイト→神経」という、逆の調節経路がJ. Filosaによって報告されました。彼女のグループは、脳スライスをもちいたアストロサイトのカルシウムイメージングにおいて、ガラス管から血管にリンガーを注入し、血管に加わる圧力に依存してアストロサイトがカルシウム応答をすることを報告しました。新しい血管−神経相互作用が明らかになるきっかけかもしれません。



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